基調講演を振り返って

講演 田中茂範先生
『小学校の先生のための英語教室―自信を持って教えるために』を振り返って

              コーディネーター 中村典生(長崎大学)

 小学校で英語を教えるための教員の英語力・指導力をアップが叫ばれて久しい。しかし英語力はそう簡単に上がるものではない。どうしたらいいの?という疑問に答えるべく,本講演では自信を持って教えるために,教師が知っておくべきポイントを大きく4つご教示いただいた。

 まず一つ目は冠詞について。とかく難しい冠詞の用法であるが,単数形にするか,複数形にするか,または名詞そのもの(はだか名詞)にするか,このポイントを「仕切り感のあるなし」という見事な切り口でご説明いただいた。また定冠詞theは意味の共有感覚のマーカー(双方に特定可能な旧情報)であると示された。

 二つ目は構文の型と語彙の学習について。パターン・プラクティスは機械的で面白味に欠けるが,パターンを有意味にすることこそが英語教育のチャレンジであるという理念のもと,Don’t touch that ○○. It’s ○○. という有意味な反復を使って,形容詞をどのように学ぶかをご教示いただいた。

 三つ目は慣用表現に注目した。慣用表現にはいくつかの種類があり,その中に「まるごと表現」と分類されるもの(Give me a break. Hang in there. などの決まり文句)がある。これらを目的や場面・状況を踏まえ,気持ちを込めて,身振りも加えて聞いたり言ったりすることで,言葉が身体に刷り込まれていくことが示された。

 最後は基本動詞takeについて。takeのコア・イメージは「何かを自分のところに取り込む」ことであるとされ,様々なイラスト付きの用例をもとに,take使いの勘どころが示された。

 特に1つ目(冠詞)と4つ目(基本動詞の使い方)は,英語ネイティブが物事をどのように切り分け,言葉を使い分けているか,という教師が知っておくべき「ツボ」を,明解にご教示いただいたように思う。

 また2つ目(構文の型と語彙学習)と3つ目(慣用表現)については,教師自身が言葉を身につけるために役立つことに加え,授業の中で言語活動に先立つ,言葉を取り込む(intakeする)ためのよい指導法をご教示いただいたようにも思う。

 今回JES関東・埼玉大会にご参加いただいた皆様のために,田中先生からなんと94枚ものスライドをご提示いただいている。是非じっくりご覧いただきたい。