基調講演

小学校の先生のための英語教室
自信を持って教えるためにー

 

田中茂範 名誉教授
(慶應義塾大学)

講演者紹介

テンプル大学リベラルアーツ学部アメリカ研究学科卒業後、コロンビア大学修士課程(応用言語学専攻)修了、コロンビア大学博士課程(応用言語学専攻)修了、教育学博士。
 茨城大学教養部助教授を経て、慶應義塾大学環境情報学部助教授、慶應義塾大学環境情報学部教授を経て現在、慶應義塾大学名誉教授。PEN言語教育サービス代表。
 研究領域は認知意味論、英語教育、コミュニケーション論で、実践のための理論構築とその応用としての教材開発などに力を注いでいる。認知言語学を英語教育に取り入れ、イディオムや文法事項などの意味の中心的概念(コア)からの英語学習法を生み出す。コミュニケーション論と意味論に関するものとして『コトバの意味づけ論』(共著、紀伊国屋書店、1996)『意味づけ論の展開』(共著、紀伊国屋書店、1998)の2冊の大著(深谷昌弘との共著)をはじめ、『Roland English~心に刺さる名言で英語を学ぶ~』(日本文芸社、2021)、『慣用表現力で話す! 語順マスター英作文』(コスモピア、2021)など英語学習に関わる多数の著書がある。また、メディアでは、NHK教育の『新感覚☆キーワードで英会話』(2006)、『新感覚☆わかる使える英文法』(2007)の講師として出演。
 英語教育の理論的背景として、『幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組み』があり、理論と実践の両面で活躍中。認知意味論、言語習得に関する論文も多数発表している。

講演の説明

 正確な統計はありませんが、世界中で15億人以上の人たちが実践的なレベルで英語を使うことができると言われています。その中で母語として英語を話すのは4億人弱です。まさに、「英語は出来て当たり前」の状況が現実化しています。こういう状況を踏まえ、英語力が、生徒たちが人生を切り拓く上で有用であることは、間違いないでしょう。そこで、今、真に使える英語力を身に付けさせることが求められています。 
 この要請に応えるため、中高では、英語教師の多くが、これまでの指導法を変えていかなければならないと考えています。教師が変われば生徒も変わります。中高の先生方は、これまでの指導法というものがあり、それを「改善」すればよいわけです。
 一方、小学校では、既存の英語指導法というものがありません。手探りの状態で、英語を教科として教えなければならない状況にあります。先生方のつぶやきには、教授法に習熟していない自分がどう教えればよいのか、教科書を進めるだけでいいのか、評価はどうすればよいか等々、不安なことがらが含まれているのではないかと思います。
 この講演では、理屈より実践を重視し、小学校の先生のための「英語教室」を開きたいと思います。実践といっても時間内でできることは限られます。そこで、3つのことを主題とします。第一に、日本人がもっとも苦手な冠詞の問題を取り上げます。
 第二に、パターンを決めれば、どんな単語でもラクラク学ぶことができるということを実践的に示していきます。そして、第三に、慣用表現は最良の言語素材であるということを強調したいと思います。
 冠詞の問題を取り扱うには、どういう対象を表現しているかで名詞形が異なるということがポイントになります。「ピアノを買う」は buy a piano ですが、「ピアノを専攻する」は study piano です。次に、パターンを決めると学びやすいということは間違いありません。Cactus. Don’t touch it. It’s prickly. Skunk. Don’t touch it. It’s stinky. のようにパターン化すれば学習効果が高まることを経験していただきます。
 そして、Give me a break.だとか Way to go. のような慣用表現は、日常的によく使われるだけでなく、英語表現に感情を込める訓練としても有用です。状況とコトバと気持ちが三位一体になったとき、英語は生徒の中で息づきはじめるのです。
 この講演は、堅苦しい話は一切ありません。あくまで、教室ですぐにでも使える方法をワークショップ形式で紹介していきたいと思います。